Aさんは案内をしてくれた方に会社の話をしました。まだ、リストラをされて無職になったわけではないので今の勤務先を書いてくださいといわれました。
確かに今は会社員で勤続年数も10年、リストラされたわけでもない。発表は来週なんだから、嘘ではないと思いました。
保証契約申込書に勤務先を記入しました。
午前中の案内でしたが夕方、管理会社から保証承認が取れましたという連絡がありました。
「良かったですね!賃貸契約はいつにしますか?」という言葉がとても印象に残っていたそうです。
入居日が決まったので、欲しかったけど、置けないので買わなかった家具、念願の「ダイニングセット」と「50インチのTV」をアマゾンで購入しました。
届け先はもちろん新しいアパートです。引っ越した翌日から使いたいので日時を指定しました。
いよいよ、引っ越しが終わり、荷物である主役「ベッド」を部屋の真ん中にとりあえず置き、衣類などを収納にしまいました。
住んでいた部屋の片付けや荷造りで疲れ果ててしまいました。その夜は久々の爆睡でした。
翌日、届く「ダイニングセット」「50インチのTV」の開梱を楽しみにしていました。
何と楽におけると信じて疑わなかった「ダイニングセット」「50インチのTV」がうまく置けないことを知ることになりました。
イメージしていた「快適な暮らし」はモノに囲まれた以前よりも「窮屈な暮らし」になってしまいました。
なぜにこのようなことになってしまったのでしょうか?
答えはすぐに見つかりました。
「設計者のほとんどの方はアパートの入居者と話しをする機会がない」という現実があります。
「アパートの案内担当者のほとんどが設計者と話しをする機会がない」という現実もあります。
この2大悲劇を私は【Wの悲劇】といっています。
入居者の声が建築に反映されないということです。お客様の声が製品に反映されなければビジネスは成り立たないということは誰もが知っている【大原則】です。
【Wの悲劇】はこの【大原則】に反しているということです。
その結果、彼らが作るアパートは大家さんがある一定期間儲かるだけです。
ある時期を過ぎたらローンの返済に四苦八苦すると可能性があります。
【一定期間儲かるだけ】の理由は
①金利が史上最低水準だからローン返済額が少ない。
②建物が新しいので入居者に選ばれやすい。
①と②は間違いなく一定期間なのです。
そこに現れたのが「家賃保証システム」でした。独立系の家賃保証会社もありますがアパートの建築会社と半ばセットになって設立されています。
例えば、積水ハウス⇔積和不動産、大和ハウス⇔大和リビングといった具合です。
「家賃保証システム」について
いろいろな考え方がありますが【空室率40パーセント時代】を前にオーナー様によっては
経営破たんを防ぐために【必要不可欠】なシステムです。
まず、家賃保証の原資はアパートに入居する方からの家賃です。アパートに入居する方が【何らかの理由】でいなければ、家賃保証はできません。
【何らかの理由】ベスト5
❶外観
❷間取り
❸家賃
❹設備
❺立地条件
「家賃保証システム」をビジネスとして成り立たせるために【何らかの理由】ベスト5の変更をオーナー様に提示してきます。例えば、オーナー様からみれば、そんなに傷んでいないと思えても❶の改善工事として外壁塗装を提示してきます。それをしないのならば、「家賃保証システム」を解約するといった具合です。
入居者に選んでいただくことが「家賃保証システム」の継続前提条件であることに対して異議は法的に通用しません。「家賃保証システム」の契約書にも明記されています。
「家賃保証システム」会社の提示する『見積金額』で「家賃保証システム」会社に工事を依頼しなければ「家賃保証システム」を解約されてしまいます。
同様に❷❸❹についてはことあるごとに「家賃保証システム」会社より条件変更として提示されます。
入居者の方からみた場合、オーナー様のご意向に縛られない状況、「家賃保証システム」会社により、市場の変化に対応している状況なので家賃なりの満足が得られやすく、しいては健全な賃貸市場成長になるものと思います。
しかしながら、問題点がないわけではありません。「家賃保証システム」に縛られて、同じような建物ばかりが増え、多様化する賃貸ニーズに呼応できなくなる可能性があります。