暮らしやすいが「住まいの価値」、賃貸住宅における競争力です。このことに異論をいう方はいません。しかし、残念ながら、「暮らしやすさ」は具体的にはわかりにくく、一般住宅にくらべ延べ床面積の小さい賃貸住宅においては基本間取りチェックリストが必要不可欠です。
~基本間取りチェックリスト~の例
❶キッチンに必要なものが使いやすいところに置けますか? (冷蔵庫・炊飯器・電子レンジ・食器戸棚・ゴミ箱)
❷脱衣洗面室に必要なものが置けますか?(脱衣かご・タオル入れ)
❸リビングルームに必要なものが置けますか?(ソファー・テーブル・TVボード・雑誌入れ・ゴミ箱)
あたり前のことばかりと思われます。
残念でありますが賃貸住宅には実際に必要なものが置けない間取りが多いという現実もあります。
理由は実際に住む方と間取りの打ち合わせをしていないということです。
注文住宅は実際に住む方、いわゆる施主様と設計者が打ち合わせをします。
❶❷❸のようなことはまずありません。
賃貸住宅の入居予定者と設計者が打ち合わせをするということは現実的にはありません。
具体的に検証してみます。
Aさんは学生の頃から住み続けていたアパートが手狭になったのでアパートを探しはじめました。
管理会社から「更新案内のお知らせ」が届いたので、いろいろ探しましたが希望するアパートは見つかりませんでした。
それでも、一度、出るという気持ちになったせいか「モノにあふれ雑然となった部屋」「収納が少ない」ということが気になって、いつの間にか大きなストレスになってしまいました。
そんなとき、ポストに【収納たっぷり、室内広々】と印刷されているチラシが入っていました。
今のアパートから車で5分程度の場所だったので思わず、間取りに魅入ってしまいました。
今、Aさんが住んでるアパートはミニキッチンに畳半分ほどの収納、部屋は6帖という典型的な【1K】でしたので収納が3倍以上、部屋も2倍広い、そのうえ洗面室があるということに目が釘付けになりました。
すぐに電話しました。まだ空室があるということでした。とてもラッキーという気持ちになりました。
案内当日、まず、目についたのがスタイリッシュ玄関ホールでした。今住んでいるアパートには玄関ドアを開けるとすぐにキッチンでしたので、すごい!気に入った!という気持ちになったそうです。
次に約12帖といわれて広さに圧倒されているなか、収納の扉を開けたらパイプハンガー、棚もついていました。あの使いこんだ「カバー付パイプハンガー」もいらなくなるんだと思うと寂しい反面、新しい生活がスタートできる。友人を呼んで楽しめる、あまり人と一緒に過ごすことのなかったというAさんですがそう思ったそうです。
キッチンもスタイリッシュなシステムキッチン、1口ミニキッチンでお湯を沸かすのが精一杯だったので何か料理でも覚えようという気持ちになったともいわれていました。ダメ押しは洗面室でした。【1K】では脱衣も部屋でしなければなりません。汗や汚れのついた衣類を食事や睡眠をとる部屋で着替えることに抵抗もありました。洗面室でそれができるんだ。なんて快適な生活ができるんだろうとまで心底思えたようです。
案内をしてくれた方に入居申込書を差し出され、すぐに記入しました。しかし、勤務先の欄が書けませんでした。
実は勤務先は会社そのものが休業状態、リストラの発表が来週あるという状況でした。学校を卒業以来、自分で転職もしましたがいわゆる会社都合で転職になるのは初めてのAさんでした。
たまたま、チラシが入ったので内覧したのでした。続きは「家賃保証がつくる諸問題❷」へ